過去にこんな記事を書いたのですが、久々に見返したら紹介した図が消えてまして、その辺を補足しとかなきゃなーと思って雑な図で描き殴る系エントリ。
軟口蓋のおおざっぱな構造と働き
赤い部分が軟口蓋。
こんな感じで、力の抜けた状態だと、鼻腔と口腔が奥のほうでつながって、鼻呼吸ができる。
力を入れると、下のような「軟口蓋の上がった状態」になり、鼻腔と口腔の接続が切断されます。
軟口蓋というのは鼻と口の接続を断つことで、「口から鼻へと逆流してはいけないものが逆流するのを防ぐ」のが本来の仕事です。
口から摂った食べ物や飲み物が鼻に抜けてしまうと大変なのでそれを防いだり、あとは嘔吐するときに吐瀉部が鼻に入るのも辛いのでそれを防いだり。
発声時は、基本的に「口から息を吐き出しつつ声を出す」ことがほとんどですので、身体の構造的には「軟口蓋を上げる」といい場合が多いです。
しかし、「鼻音(mやnのような子音、日本語にはないけど鼻母音など)」を発音するときや、「あえて鼻にかかったような声を出したいとき」には、軟口蓋を下げる必要があります。
ついでに、喉頭の話
喉頭や声帯についても、これらの器官も「発声のためだけに存在するもの」ではなく、本来の役割は「気管と食道を仕切り、気管に空気以外のものが入らないようにする」ことです。
脱力し、喉仏(喉頭)が下がっているときには、基本的にはこんな感じで気管への道はオープンになっています。
赤く塗った部分の前端の丸い方を喉仏(甲状軟骨)、後端の細長い方を「喉頭蓋」と呼ばれるものだと思って欲しい。
声帯は喉頭の中の喉頭蓋より下の部分に、「第二の弁」として存在している。
喉頭蓋というのは文字通り、喉頭に蓋をすることによって気管への入り口を閉鎖する働きをしている。
喉仏を上げると、全体的に回転運動をして、喉頭蓋が閉まる。
こうなると、気管は封鎖され、食道への道だけが開いているので、食べ物や飲み物は気管に入らず食道に入っていく。
このようにして気管への誤嚥を防ぐのが、喉頭のとても大切な働き。
発声時には、気管を封鎖してしまっては当然のように声が出なくなるので、「喉頭を下げるのがとても大切」というのが言われています。
あと、喉頭の上げ下げは「気道の開閉」だけじゃなく、「声帯の伸び縮み」という点でも発声に大きく影響してくるのですが、それを説明しだすと大変長くなるのでここでは省略。
ついでについでに、○○腔の話
せっかくなので、口の中にある空間についてもう少し詳しく分けてみる。
鼻腔(水色のエリア)と口腔(緑色のエリア)は特に説明の必要はないかと。
鼻腔と口腔が合流するエリア〜食道の入り口前までの空間(赤色に塗ったエリア)を、「咽頭(咽頭腔)」と言います。
軟口蓋の影響で鼻腔にも口腔にも成り得るエリアを「上咽頭」、口腔の真後ろ部分を「中咽頭」、舌の付け根や口蓋垂の上端より下のエリアを「下咽頭」と三分割することもある。
そして、喉頭蓋より下で気管側の空間(黄色に塗ったエリア)を「喉頭(喉頭腔)」と言います。
この喉頭に声帯が収まっていて、声の元になる音はここで出来上がります。
これらの空間を総合して「喉」って言うことが多いけれど、ある程度分けて考えられると何かと便利なこともあったりなかったりします。
例えば、「力を抜けば喉が開く!」って言っている場合、その「喉」とはおそらく「咽頭」、特に中咽頭のことでしょう。
咽頭は、何かを飲み込むときに力むことで縮んで、ものを下に送り出す働きがあるので、力めば空間が狭まり、力を抜けば広がりますので。
また、「喉仏を下げれば喉が開く!」って言っている場合、その「喉」は「喉頭」がメインになります。
喉仏が下がることで喉頭の空間が上下に広がり、それに引っ張られて咽頭や口腔も広がることもあるかなー、って感じ。
他に、「軟口蓋を上げれば喉が開く!」と言う場合には、その「喉」は「上咽頭」のことでしょうね。
軟口蓋が上がれば上がるだけ上咽頭は広がりますので。
こんな感じで、同じ「喉が開く」という言葉でも、起こっている現象も場所もかなり違うので、「喉」って一口に言うけど、それは具体的にどの部分なのか?ってのを頭のどこかに置いて置くと、発声指導におけるコミュニケーションが円滑になるときがあったりなかったりします。