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[ボイトレ][用語の解説][声質の改善]「鼻声」って言葉はあんまり使わないほうがいい。

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最近なんだかやたらと「鼻声」の過去記事が参照されているようなので。

まず、「鼻声」っていう言葉が、曖昧過ぎて、真剣にボイストレーニングを考える上ではあまり使えない言葉であることに注意。


タイトルのこころですが、あんまりに色々な症状が「鼻声」という言葉でくくられてしまっているので、「鼻声」の治し方を聞かれても応えようがないんですね。

「鼻声」と言われても本当に症状は人それぞれですし、だから治し方もばらばらなんです。

「鼻声」というところで思考停止してしまっては何にも解決しないですし、だから「鼻声」って言葉はあんまり使いたくないんですよ、本当は。

もう一歩掘ったところで考えたい。



「鼻声」とは、その1


過去記事でも書いたのですが、

「鼻腔共鳴が全然足りなくて、鼻が詰まったような声になってしまう」

「鼻腔共鳴以外の共鳴が足りなさすぎて、鼻にかかった嫌味な声になってしまう」

…という、原因も結果も対処方法も真逆なものが、同じ「鼻声」という名前で呼ばれているのです。

だから、ただ「私、鼻声なんです!」「君、鼻声だからなんとかして!」と言われても、正直どうしようもありません。

だって、どう対処するかは人それぞれ、症状次第なんで。

「鼻声だったら、こうすれば必ず良くなる!」って方法はなかなか提示しにくい。


こういう場合は、自分の症状に合わせて、共鳴のバランスを整えるトレーニングをしていく必要がありますね。

鼻腔の共鳴が弱い場合は、こんなトレーニングとか。

伝わる声はよく響く 共鳴を得るための簡単な方法 「ngトレーニング」:永井千佳の音楽ブログ:ITmedia オルタナティブ・ブログ

鼻腔以外の共鳴が弱い場合は、こんなトレーニングとか。

胸一杯に声を響かせて、「魅力的な深い声」を目指そう! - 烏は歌う

こういったトレーニングを行いながら、声の「バランス」をとっていくことが大切。



「鼻声」とは、その2


また、

「声を出すときに、鼻から過剰な息が抜けてしまう」

ことによって、声質が軽くなりすぎてしまったり、滑舌が悪くなってしまう状態も、やっぱり「鼻声」と言われていますので、めんどくさい。


鼻から過剰な息が抜けてしまう場合、軟口蓋(口の奥の、鼻と喉の分かれるところ)の筋肉が緩みきっているのが原因の場合が多いですね。

他にも、口が必要最低限の大きささえ開いていないとか、唇が全く動いていないとか、そういうとき。

なので、改善するには、その辺の筋肉を動かすトレーニングが効果的ですね。

軟口蓋を動かすとなると、いわゆる、「喉を開く」トレーニングになります。

久々に合唱やるので、初心に帰って、喉を開いてみる - 烏は歌う


それと、「鼻から息漏れしちゃだめ」という指導と、「鼻にしっかり共鳴させないといけない」という指導って、矛盾してませんか!?とよく聞かれますが、矛盾してません。

息の流れと、音波は、全く別物です。

また、鼻腔共鳴と言っても、共鳴させる場所は鼻の穴近辺ではなく、もっと奥の方です。

なので、鼻から「息」を漏らさずに、「音」だけを共鳴させることは可能です。



「鼻声」とは、その3


あとは、

「単純に滑舌が悪い」

場合も、「鼻声」と判定されてしまうことが多いですね。


滑舌が悪く、例えば「n→舌を口蓋にべったりつけて、音を鼻に抜くことで出す子音」を完全に出せず、「r」や「d」になってしまう症状。

逆に、「r」や「d」が「n」になってしまう症状。

どっちにせよ、そういった状態で、子音が不明瞭になってしまう状態。

こういった滑舌の悪さも、「鼻声」と言われてしまいがちですね。


あとは、やっぱり舌の動きが悪く、舌が常に「口蓋(上顎)」の近くにあって、声が常に鼻に抜け、口に響かない状態も「鼻声」と言われがち。

とりあえず、

「ちゃんと口が開いているか」

「母音を発声するとき、舌が上がっていないか(舌の先端が舌の前歯についているとよい)」

あたりをチェックしてみましょう。


こういう時は、鼻云々はあまり関係なく、「舌」をしっかり使うトレーニングが必要となりますね。

舌を鍛えるトレーニング。 - 烏は歌う

滑舌を鍛えるための、ちょっとしたトレーニング - 烏は歌う

エリック兄さんのボイストレーニング。 - 烏は歌う



過去エントリ


典型的なダメ声、「鼻声」とは? - 烏は歌う


声を鼻に通すことについて…「声の響き、声を飛ばす方向」と「息の流れ、通り道」はさっぱり別物。 - 烏は歌う


声を出そうとすると鼻が動いてしまう、というお悩みについて - 烏は歌う


[メンタル][雑記]書けば書くほど不自由になるが、いったん不自由にならないと自由になれないという話。

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さて、最近更新が滞りがちですが、身内の合唱団で「発声関係の勉強会」をやろうという話になりまして。

とりあえず、割と暇で、かつ団の中ではそこそこ勉強している部類の私が資料作ったり内容の計画立てたりしてるんです。

で、そっちの方に気力を使っているため、ちょっと更新頻度が落ちたりしてます。


で、そんな資料作ったりしながら思い出したのが、昔ホッテントリになってたこの記事。


マニュアル本の作りかた - medtoolzの本館

動作を言語に落としこむのは、簡単なようでいて案外難しい。

その作業に慣れている人ならば、「こうやればいいんだ」と演じてみせることはごく簡単なことなのに、「こう」を言葉に置き換えたとたん、「こう」は遠のく。動作を言葉に置き換えて、誰にでも再現可能な作業から結果を導けるような文章を作れる人は少ない。

作業の過程を記述するのは難しい。慣れた人が内的にやっている動作は、その人にとってはもはや当たり前に過ぎて、外から見て自分がどんな動きをしているのか、ベテランはしばしば分からない。過程を言葉に置き換えるためには、まずは自分の動作を文章にして、今度はその文章に従って、実際に動いてみないといけない。


動作がきちんと言葉に置き換えられていれば、今まで簡単にできた何かが、いきなりできなくなっていることに気がつく。「できない」ことに気がつくと、今度は自分の文章にかけていたものが見えてくる。効率を落として、そうした体験を繰り返すことで、ようやく「できる」を記述できるようになる。


マニュアル本を作ると、最初はかえってミスが増えるし、作業の効率は落ちていく。そうならなかったら、その人の書いたマニュアル本は、全く使えないものである可能性が高くなる。


…これ、本当にそうです。

私もしょっちゅう、

「ブログ書いたら、余計わからなくなった!」

「書いたものをその順番に実行してみたら、実行できない!手順が欠けてる!順番が違う!」

「ブログで紹介したことを意識し過ぎて、まともに歌えなくなった!」

「書いたことばっかりに目が行ってしまって、他の問題がガンガン出てくる!」

…とか、よくあります。

非常によくあります。

これが、ブログのいいところであり、悪いところでもある。


今回の資料作りでも、書けば書くほど自分の文章にツッコミどころを見つけてしまい、全然できあがらなくて。

書いた通りにやってみたら、「…あれ?」となってみたり。

ただ「…あれ?」で終わるだけならいいんですけど、さっきまでできたことが、意識したらできなくなってたりして。


でも、そういう過程を経ないと、レベル差や感じ方に差のある人に何かを教えたり、意図を共有することは不可能なんですね。

少なくとも、「マニュアル化」はできない。


合唱団としてレベルアップしようと思ったら「色々な技術をある程度はマニュアル化して共有するべき」だと思って、私は勉強会用の資料を作ってみてます。

こういう試みは身近で何度もあったのですが、やってみると必ず訪れる「かえって能率が落ちていく段階」に耐え切れず、なあなあになってしまうことが多かったですね…。

で、マニュアル化とか無理だね、と。できている人はできているんだしいいか、と、なる。

で、「頭から声を出せ」だの「響きがどったら」だの、抽象的で受け取り方は無限大!(←つまり具体性は限りなくゼロ)な指示しか出せなくなったり、精神論に終始するハメになるわけ。


そういう言葉ってのは「すでにわかっている人同士でわかりあう」ためか「わかったふりをする」ためにしか使えないので、そういいう言葉が飛び交う環境では「まだわかってない人」は「ニブイヤツ」として放置されてしまう。


産みの苦しみを超えられるのか、という話でもあります。

でも、今の私は、

「マニュアル本を作ると、最初はかえってミスが増えるし、作業の効率は落ちていく。そうならなかったら、その人の書いたマニュアル本は、全く使えないものである可能性が高くなる」

ということを知っているから、 けっこう気楽に超えられそうな気がしてます。


合唱団に限らず、発声に限らず、色々なところで「マニュアル作り」をする必要を感じる場面があるかもしれませんね。

実際にやってみると、ものすごく苦しい作業です。

苦しむ中で、「もしかしてマニュアル作りって、自分には向いてないんじゃないか…」とか思うかもしれない。

でも、そうしないとできない作業なんだ、苦しんだだけ良い物になるんだ、というのを知っておくと、がんばれます。

[ボイトレ][発音・滑舌]お前らみんな、もっとIPAを勉強するべきです。(副題:発音関係のホッテントリに便乗しよう。)

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はてブのホッテントリ経由でこんな記事をみました。


無駄な知識などない:日本人は3種類の「ん」を発音してるらしい


ボイトレとか歌とか、たぶん芝居とかアナウンスやっていると、「常識的な話」だと思ってしまうところなんですが、ブックマークの反応見る限り、そうでもないみたいなんですね。


なので、今日は発音に関する基本的な話をしてみましょうか。

ちょうど私も勉強しなおしているところなんで。



そもそも、私達が「ことばを発音(調音)」する仕組み


声は、みなさんご存知の通り、喉の中にある声帯という器官を肺からの気流によって振動させることによって生まれます。

しかしこれだけでは、「声」や「言葉」というよりは、単なる「音」に過ぎません。

声帯で生まれた音を、ちょうどよく共鳴させたり、声帯以外の部分で生まれるノイズとミックスしてやることで、はじめて「声」で「言葉」を表現できるのです。


声帯で音が生まれ、共鳴によって大きくなった音を、「言葉」にする工程を専門用語では「調音」と言います。

舌や唇などの「調音器官」によって共鳴の様子を変えたり、気流を阻害したりすることで、「母音」や「子音」が生まれます。


普段喋るときに、いちいち「前舌で硬口蓋を弾いたあと、顎を軽く閉じつつ、前舌で軽く声道を狭めて…」みたいに意識はしてないけど、注意深く観察してみるとすごく複雑な作業が行われていて、人体ってすごい!と思える。



「正しい調音の仕方」を知るメリット


さて、その「調音」ですが、普段意識していないだけあって、「我流」「てきとう」に行なってしまいがちです。

そもそも、日本で暮らしていると、「正しい調音の仕方」を習うことってそもそもほとんどないのかもしれない。

まあ、知らなくてもおおむね不自由なく生きていけるからこうなっているとも言えますが。

しかし、習慣で「誤った調音方法(舌の動きとか、唇の動きとか…)」をしてしまえば、他人とはちょっと違う、伝わりにくい発音になってしまいがちです。

そしてそもそも、「どうやったら正しいのか」を知らない限り、自分の何がどう間違っているのかには気づけませんよね。

だから、「正しい調音の仕方」について勉強してみるのも、役に立つ経験ではないかと思います。


特に、「正しく適切な発音」「より伝わりやすい発音」というものが求められる「声を使った趣味や仕事(歌、芝居、アナウンス、電話…)」をしている人にとっては、「正しい調音の仕方」というのは是非とも知っておくべきことですね。

特に、合唱とかクラシック系声楽やってる人はよく「深い母音」を出しなさいと言われるけど、何がどう深いのか説明してくれる先生って少ないでしょ?これも結局、舌とかの使い方なんだけどね。


さらに、外国語の発音を勉強するときには、是非とも「正しい調音の仕方」を知っておくべきです。

「耳で学ぶ」とか、「日本語の○と△の中間的な感じで出す」とか、そういう勉強の仕方だとどうしても限界があるので、

「正しい舌の動き」

「正しい口の動き」

「正しい唇の動き」

などを理論的、視覚的に知っておいてから勉強した方がずっと効率が良いと思うのですよね。



IPA=国際音声記号 (International Phonetic Alphabet)


そこで、「正しい調音方法」というものを考える上で、非常に有効なのが、IPAを学ぶこと。


国際音声記号 - Wikipedia

国際音声記号(こくさいおんせいきごう、IPA: International Phonetic Alphabet)は、あらゆる言語の音声を文字で表記すべく、国際音声学会が定めた音声記号である。国際音声字母(こくさいおんせいじぼ)、万国音標文字(ばんこくおんぴょうもじ)とも言う。


非常にシステマチックに「発音」と「調音器官(舌、唇、あご…)」との関係が示されています。

Wikipedia眺めるだけで結構勉強になりますね…。


自分にとって「発音しにくい音」「どうやって発音したらいいかわからない音」や、他人から「発音が違う言われる音」「聞き取りにくいと言われる音」については、なぜそうなってしまうかと言うと、正しい調音器官の動かし方ができていないからということになります。

そういった発音の「正しい出し方」について学ぶのに、非常に具体的かつ詳細に「発音」を分類したIPAは非常に役立ちます。


とは言え、そんなに大それたものでもなく、英語の辞書や教科書にのってる、[ ]書きの発音記号なんですけどねえ…。

あれをしっかり教えてくれる先生が少ない(個人的な体感なので保証は無い)のは、けっこう大きな損失な気も。

あと、この理論を知らずに発音についてボイトレ受けちゃうと、特に母音については酷い目に遭いかねない気がするので、もっと普及して欲しい。



関連エントリ


・似たような内容の過去記事

「明瞭な発音」を手に入れるためのボイストレーニング - 烏は歌う


・歌の発声にIPAを生かす方法、「深い発声」に悩んでいる人はぜひ読んでみて

「深い発声」ってなんなんだろう…母音と舌の形 - 烏は歌う

[ボイトレ][声域][用語の解説]ミドルボイスの呼び名問題。

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この前も書いた通り、身内の合唱団内での発声勉強会向けに、改めて色々と勉強しなおしている最近ですが。

そんな中で面白いなー、と思ったのがこの動画。

VTC 27話 男声にミドルボイスは存在しない!? - YouTube

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詳しくは、動画見てくれって話ですが、

・このボイストレーナーさんは

・男声の場合、チェストボイスの一つ上の声区をヘッドボイスと呼んでいる

・(その声区を「ミドルボイス」と言うボイストレーナーもいる)

・その方が感覚に合っているから

・「名前のつけかた」の違いの問題かな

…というお話。


話にも出てきた

とかだと、声区を「チェストボイス」「ミドルボイス」「ヘッドボイス」…に分けてますが、

ここでは男声の声区を下から「チェストボイス」「ヘッドボイス」…と呼んでいます、と。


確かに、自分のまわりで、男声の下から二つ目の声区(だいたいmid2F、F4あたりより上)の声を慣例的になんて言っているかと言えば、「ヘッドボイス」だの「頭声」だのと言っているわなあ、と思いました。

一応このブログだと「チェストボイス」「ミドルボイス」「ヘッドボイス」方式で書いているはずですが(古い記事についてはあまり自信がない)。


こう説明すると感覚的にはすごく楽なので、うちの合唱団で説明するときはこっち使おうかなー、と思ったり、でも女声も勉強会に参加するなら、同じものを違う呼び名で呼ぶのはどうなのかなーと思ったり。

これについてはもう少し迷う予定。


この辺を説明して、誤解なく使えるのは本当に難しいんですよね。

ただでさえ、合唱人には

「胸声」→なんかよくわからないけど胸に強く響く、合唱では使ったらダメな声

「頭声」→なんかよくわからないけど頭に強く響く、合唱で使うべき声

みたいな「偏見」があったりして、それをそのまま「声区」としての「チェストボイス」とか「ヘッドボイス」に当てはめられると、本当にこじれる。

明らかに「チェストボイス(音域がmid1あたり、声帯がしっかり閉じて全体が振動している状態)」でも、「これは頭に響かせる意識で発声しているからヘッドボイスなんだ!」と言い張られてみたりね。

けっこう困る。


また、「ミドル/ヘッドボイス」を「ファルセット」とごちゃまぜにして「裏声」「ファルセット」と呼んじゃっている場合も多いし。

全然別物なんですよ。

あとは、ありがちな重大な勘違いとして、

「ミドルボイス=ミックスボイス」だと思い込んじゃって話が通じないときとか。

「チェストボイス」「ミドルボイス」「ヘッドボイス」などと呼ばれている声区があって、その声区を「滑らかに繋ぐ技術」がミックス(ボイス)なんですよねえ。

「チェストボイスの出せる音域の声とミドル(ヘッドボイス)の出せる音域の声を滑らかに繋ぐ技術(+他にもいくつかある、声区の微妙な音域でも同じことができる技術)」がミックスボイスであって、「ミックスボイスという声区」があるわけじゃない、と定義する人が多いです。


そもそも「ヘッド」とか「チェスト」とか、そういう体の部位がついてるのが誤解の元にもなっているからなー…。

感覚的にはわかりやすいんだけど感覚って個人差が大きいから誤解の元になりがち。

また、巷のアマチュア声楽家になんとなく知られている用語である「頭声」とか「胸声」とかと、現代的なボイトレで言われるところの「ヘッドボイス」「チェストボイス」って同じときもあるし違うときもあって。

この辺を考えると本当に面倒くさい。


もうだいたいわかっている人にはちょっと説明すればこちらが何を言っているのかわかってもらえることが多いのですが、「一から説明する」となるとちょっと考えなければならないことがたっぷりあるかな、と思いました。

[ボイトレ][呼吸]高音での息の量の話とか、息の支えの話とか。

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この記事を読んだりして、考えたりしたこと。

腹式呼吸がわるーい影響を与えること! - 大阪梅田カラオケ上達のコツレッスン教室



釣りタイトル


まあ、ぶっちゃけ「釣りタイトル」ですよね。

Twitterの方にこの記事流したら、反応が賛否さまざまでしたが。


「腹式呼吸」がダメなんじゃなく、高音を出すときに”「お腹でしっかり支えて、強い力で思い切り息を出そう!」”としてしまうのがダメ、というお話なんです。


で、”「お腹でしっかり支えて、強い力で思い切り息を出そう!」”とすることが、「発声に必要な腹式呼吸」であるとか、「腹から声を出す」ということだ…という誤解がけっこう広まっているという現実がありまして。

高音域で、強い力で思い切り息を出そうとするのはダメです。

…ダメなんですが、やってしまいがち。


だから、「腹式呼吸をしよう!」という意識・言葉ごと、その「誤解」を忘れちまえ!というお話。


タイトルは確かに誤解を招きかねない表現ではあるんですが、

「間違った腹式呼吸(息の量多すぎ)」をやられるくらいなら、

「自然な呼吸をしてくれ」

「呼吸について意識しないでくれ」

…と言いたくなる気持ちはよくわかります。



高音で、息を吐くのを頑張ってはいけない


高音域では、すごーくおおざっぱーに話すと、

「声帯が薄ーーーくなって、声帯を鳴らすのに必要な息の力が軽ーーーくなります」

という感じです。


だから、そこに「強い力で思い切り息を出しちゃう」と、声帯に反発する力が急激に入っちゃって、喉が締まるような感じがして声が出なくなっちゃう。

仮に出ても、声質が最悪だったり、音の高さやらもずり下がって気持ち悪くなりがち。

もしくは、声帯が息の流れに耐えられなくなって、開きっぱなしの生き別れ状態になっちゃって(息だけに)、声帯の「皮だけ」が振動する、ほとんど声帯が振動・開閉しない「ファルセット」という声になってしまう(ダメな意味で)。


だからね、高音が上手くいかないのは(おおむね)「呼吸が弱いせい」じゃないから、息の量を増やそうとしたり、変にお腹に力を入れたり、お腹に意識を集中させるのはやめよう。…というお話なんですね。



「お決まりの言葉」の問題


何度も書いているんですけど、

「おなかから声をだして!」とか「のどをひらいて!」とか…

そういう言葉って、どうとでも取れる曖昧言語、感覚言語、イメージ言語だから、むしろ初心者に聞かせても悪い効果が出やすいんですよ。


高音域でむりやり息を出してしまう、なんてのは、誤解が生む弊害の最たるものかと。


「腹式呼吸が大切だ!」ってのも、説明してみると上手く伝わっているか非常に不安なポイントではある。

そもそも、アマチュア指導者やら発声に詳しいとされている人でも、「なぜ腹式呼吸が大切なのか」を、漏れ無く、正しく説明できる人って実はそんなにいないかも。

私も本当に気をつけなきゃなー、と思う次第です。



「支え」について


これも何度か書いているんですが、


発声の「支え」ってなんなんだ - 烏は歌う

「息が無駄に出て行かない状態」をつくること=「声の支え」


なんです。

息を強く大量に吐くこと、ではない。

腹式呼吸をすること=支えがあること、でもない。

むしろ、「息が出すぎない方向に力をほどよくかける」ことが重要で、それってむしろ見方によっては「腹式呼吸」を「阻害する」方向に力が掛かってるわけなんですが。

でも、体感としては、そうすると「腹から声が出てる感じ」「腹を使って強くたくさんの息を吐いている感じ」がする。


この辺説明するの難しいよ!…と言うか、めんどくさいよ!

なので、この手の言葉はあんまり使わない方がいいです。本当に。

[ボイトレ][呼吸]高音域での「息の支え」について。

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久しぶりの更新ですが、前回の補足。



前回のおさらい


高音域では「声を出すのに必要な息の量」というものは、低音時に比べてかなり「少なく」なります。


その理由は…

高音域では、すごーくおおざっぱーに話すと、

「声帯が薄ーーーくなって、声帯を鳴らすのに必要な息の力が軽ーーーくなります」

という感じです。


だから、そこに「強い力で思い切り息を出しちゃう」と、声帯に反発する力が急激に入っちゃって、喉が締まるような感じがして声が出なくなっちゃう。

仮に出ても、声質が最悪だったり、音の高さやらもずり下がって気持ち悪くなりがち。

もしくは、声帯が息の流れに耐えられなくなって、開きっぱなしの生き別れ状態になっちゃって(息だけに)、声帯の「皮だけ」が振動する、ほとんど声帯が振動・開閉しない「ファルセット」という声になってしまう(ダメな意味で)。


だからね、高音が上手くいかないのは(おおむね)「呼吸が弱いせい」じゃないから、息の量を増やそうとしたり、変にお腹に力を入れたり、お腹に意識を集中させるのはやめよう。…というお話なんですね。



でも、やっぱり「高音ではお腹の力が必要」?


…なのですが、

「高音ではやっぱりお腹に力が入るよね!?」

という体感を持っていらっしゃる方もすごく多いと思うんです。

実際、前回紹介した記事をTwitterの方に流したら、「違和感あるなー」って人が比較的多かったですし。


私も、高音域ではけっこう「お腹を使っている」体感ありますしね。

長時間歌っていると、やっぱり高い声を多く出す場合の方が、お腹に疲労感やら違和感やらを感じます。



そのとき、お腹で何が起こっているのか


では、「お腹を使っている」のだから、やっぱり「腹式呼吸でいっぱい息を吐いているの?」と思ってしまうかもしれませんが、それはやっぱり違う。


原理的には、どう考えても、「高音域では、息の量は少しでいい」わけですから。

実際に自分の体で確かめてみても、ある程度は高い音の方がロングトーンを長く伸ばせます。

つまり、高音域ではあんまり息の量を使っていないわけです。


でも、お腹まわりの筋肉は、吐く息の量が少ないのに、いつも以上に疲れます。

このとき、お腹では何が起こっているのでしょうか?

それは、

息を「吐き過ぎない」ように、腹筋をフル活用している

のです。


筋肉は、単に一方向に「伸ばすだけ」「縮めるだけ」の時はそれほど負荷がかかりませんが、「伸ばす力と縮める力を拮抗させた時」にはものすごく負荷がかかります。

いわゆる、筋トレなどで言うところの「アイソメトリック」ってやつですね(この説明はすごく雑なので、詳しく知りたい人は自分で調べましょう)。


で、高音域では「息の支え=息を余計に吐いてしまわないような力」が必要なわけですが、このとき

「息を吐き出そうとする力と、息を留めようとする力の拮抗状態」

が起こるわけです。

だから、「息の支え」ってやつができると、けっこう腹筋が疲れます。

でも、やっぱり、その疲れは「息を多く吐き出すため」ではないのです。


また、「息を吐き過ぎないため」だけでなく、

息を「いつでも吐ける」ようにするためにも、腹筋をフル活用している

のです。

高音域の場合、「息の量を、ゼロ〜少ない状態から、徐々に多くしていく」という感じの息の使い方をすると、音程が「ずり上げ」になってしまったり、上がりきらずに「フラットする」「ずり下がる」という状態になりがち。

なので、いつでも適量の息(腹圧)を声帯に瞬時にかけられるように、「息を吐き出そうとする力と、息を留めようとする力の拮抗状態」を作っておいて待機する必要があるのです。


この、「いつでも適量の息(腹圧)を声帯に瞬時にかけられるようにすること」も、「息の支え」と言いますね。

というか、「息の支え」の一面。

上の、「息を余計に吐いてしまわないようにすること」も「息の支え」の一面ですが、こっちも大事。

「多くも少なくもない息を、いつでも吐けるよう、体をコントロールできること」

…ってのが、「息の支え」の無難な定義かな、と思います。

で、そのためには、「息を吐き出そうとする力と、息を留めようとする力の拮抗状態」が必要ですよ、と。


むりやり何かに喩えると、

車の運転技術の「ヒール・アンド・トゥ」

みたいな感じですね。

つまさきでブレーキを踏みつつ、かかとで同時にアクセルを煽っておく感じ。

シフトチェンジ時とかに、ブレーキをかけて減速させつつも、同時にアクセルを吹かしておくことで、回転の落ちすぎを防ぐやつ。

で、アクセル踏みすぎたり、踏み込みが足りなければ「ガックン」するし、エンジン痛めたりするし、エンストも起こったりする。

声も同じく、吐く力が弱すぎてもだめだけど、息が強すぎても「ガックン」したり、喉痛めたりするわけです。

非常に繊細なコントロールが必要です。

高音が出ないからと言って、むりやりアクセル踏んじゃだめだよ。

[ボイトレ][呼吸]ブレスの具体的なトレーニング方法。

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前回の記事に対する反応で、

「理屈はわかったけど具体的にどうすればいいの」

という感じのものがあったので、軽く紹介しときます。



エクササイズの紹介。


心技体の「体」部分。


腹から声を出す!その2 - 烏は歌う


とりあえずは、こんな感じで、「プレッシャーブレス」と呼ばれるエクササイズをやって、腹のインナーマッスルを鍛えてみるのはいかがでしょうか。

このエクササイズをすることで、「息を吐く力」と「息を留める力」の拮抗状態を起こしているときの身体の状態を知ることもできます。



エクササイズの紹介2。


心技体の「技」部分。


腹から声を出す!その3 - 烏は歌う


いわゆる「腹を突き出しながらのブレス・発声」です。

一部では推奨されない身体の使い方ですが、できるとできないとでは大違いなので、実際に使うかどうかは置いといて試してみてほしい発声法です。



出すときのイメージの話。


心技体の「心」部分。


蝋燭の正しい使い方、その1(ボイトレ編) - 烏は歌う

蝋燭の正しい使い方、その2(ボイトレ編) - 烏は歌う


これの2の方の、

「口の前に置いたロウソク(別にロウソクじゃなくてもなんでもいいんだけれど)を、息で揺らしてしまわないように声を出そう!」

みたいなイメージで発声すると、息の「吹きすぎ」の予防になって良いとよく言いますね。

「息を前に出すなー」とか「後ろに声を出せー」とかファンタジックな指導をする人もいますが、だいたいこんな感じで声を出そうとすると、「息を吐き過ぎないようにする力」が働いて、いわゆる「息の支え」が身につきます。

あくまでイメージだから、合う合わないもあるし、確実なものではないけれどね。



ブレスエクササイズをやる上での注意。


呼吸トレーニング、レベル別Tips。 - 烏は歌う


「こういうトレーニングをやるときに、どういうところに気をつければいいか」

などというあたりについては、過去にこんな記事を書いてみました。

[ボイトレ][レビュー]いま購入するかどうか迷っているボイトレ本。

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更新感覚が開き過ぎないように、メモ程度の記事。

身内でのボイトレ勉強会も終わったので、更新頻度もそろそろ戻ってくる…はず。


ボイトレ本って、なかなかお高いものも多いですし、何冊も買っていると内容が被って被って「これ買った意味あったのかなあ…」となってしまいがちなのですが。

しかしながら、やっぱり買って1冊通してじっくり読み込んでみないと、筆者の意図がわからなかったりして、新しい「観点」が身につかないので、ある程度は買わないといけないものでもあって。

非常に難しいところなんですが、今のところ私の脳内購入リストの上位の2冊をメモしておきます。


だいぶんマニア向けな内容なので、あんまり「発声の勉強をはじめたばっかりです!」みたいな人には向かない、とは思う。



ボーカリストのためのフースラーメソード 驚異の声域拡大をもたらすアンザッツとは?


立ち読みしてて衝撃を受けた、なんというか「怪書」(良い意味で)。


過去にこのブログでも、

声を○○に響かせるとか、当てるとか。 - 烏は歌う

という記事で、

・「声を○○に当てる」という指導法がなんとなく曖昧なまま蔓延しているよ!

・実際に声が頭だとか胸だとかに特別に声が当たったり、特別に共鳴したりするわけじゃないよ!

・声帯を取り巻く筋肉のバランスが変わることで、声が特定の場所に「当たる感じ」がするんだよ!

・それを解明したのは、「フースラー」って人だよ!

…という記事を書きましたが、その「フースラー」のメソードについての本です。


前半は、そのフースラーのメソードである「アンザッツ理論」について。

いわゆる、「七つの声」(フースラーは、声帯まわりの筋肉の使い方によって声を七つに分類した)で、具体的にどのような筋肉が使われるのか、どのような筋肉が鍛えられるのかが書かれています。

筋肉モデル図などは、そこそこ詳細ながらも見やすくて、なかなか素敵。

声を出すための器官について、解剖学・生理学的に知りたい人にとっては、よい入門書になるのではないだろうか。


後半は、怒涛のトレーニングなわけですが、「民謡」とか、ほぼ奇声に近い感じの「原始的な声」が主体で、なかなかカルトというか電波な感じが漂っていて素敵です。

というか、電波な感じの文体や図は全体を通じてところどころに見られて、なかなかスリリングな1冊なわけですが。

その独特の雰囲気と、科学的なメソードの融合感がまた素敵。

…「YUBAメソッド」とか、あんまりボイトレ慣れしてない人にやらすと、「あ↓ーーーwwwほ↑ーーーwwwなにこれwww」みたいなリアクションがでてきたりするんですが、YUBAメソッドの本の数倍は「ゆんゆん」してるぞ。

高度に発達したボイトレは、奇行と区別がつかないのである。

だから、合わない人にはとことん合わないだろうけど、読んでみる価値はあるのではないだろうか。



上手に歌うためのQ&A -歌い手と教師のための手引書-


いわゆる「ベルカント唱法」と、現代的な発声知識の融合。


Q&A形式で、「声楽的に歌う上で大切なこと」が網羅されています。

そして、回答の元になる「発声についての考え方」が、かなり現代的なのもポイント。

伝統的な発声法・指導法だと、どうしても「感覚的で曖昧な指導」になってしまったり、「科学に基づかない・事実に反する指導」になってしまったりしがちなのですが、この本ではそんなことはなく、最近の発声科学に基づいた具体的な指導が多いですね。

むしろ、伝統的なメソッドにつきものの「感覚的で曖昧な指導」が、それって具体的にどういうことなのか、現代的な発声科学ではどういう位置づけになるのか、という解説が非常にわかりやすくて便利。

ボイトレやってて、「感覚的で曖昧な指導」に出遭って混乱してしまったとき、この本があると助かるなあ…と思います。

あとは、ボイトレ指導してるとき、「感覚的で曖昧な指導」でしか説明できねえ!けど、それじゃいまいち伝わらねえ!ってときとか。


伝統的な声楽メソッドと、現代的な発声科学の「橋渡し」に成り得る本なので、うちの合唱団に1冊置いておきたいなあーと思っているのですが、4,000円もするのでポケットマネーではちょっと気軽に買えず…。

予算が下りるか交渉してみようか。


そんな感じの本なので、「伝統的なベルカント唱法を伝統的に学びたい!」って人には、あんまり向かないとも言えますね。

まあ、「ベルカント」って言葉自体がそもそも曖昧だって話も云々(→Wikipedia「ベルカント」)。

特に日本では、言葉だけが先行しちゃって激しくバズワード化しちゃってる気がするなあ。


[用語の解説][ボイトレ]「地声」は決してダメなものじゃない、というお話。

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地声って大切!


私がRSSでチェックしているボイトレ関係のブログで、特によく読んでいる2つのブログに、似たような時期に「地声」に関する記事が偶然アップされていて、ちょっと驚いたのですね。


アルトの地声は怖くない! - ヴォイストレーナー チャトラ猫の原稿倉庫 - Yahoo!ブログ


ボイストレーニングは地声を鍛えなければ始まらない:永井千佳の音楽ブログ:ITmedia オルタナティブ・ブログ



そもそも地声って何?


で、「地声は大切」と聞かされると、

「そんなの当たり前だよねー」

…って反応の人と、

「そんなわけないよ!地声はボイトレでは使わないよ!」

…みたいな反応の人がいるわけです。


なんでこんな反応の別れ方をすると、

単に”地声=低い声”と定義している人もいるし、

地声というものを

”地声=怒鳴り声、あるいは、地声=非音楽的発声”

として定義して喋る人もいるからなんです。


「地声」という単語の意味について、「チェストボイス(男声ならだいたいmid2E以下、女声ならだいたいhiA以下で主に使われる声)」のことだと捉えている人が多いです。

だから、地声のトレーニングが大切なのなんて当たり前のこと。

特に男声の歌なんてほぼチェストボイス音域ですしね(最近はそうでも無いが)。

また、チェストボイスは、「ふだんもっともよく使う声」であり(これも例外はあるが)、声帯を最も大きく使う声なので、それはそれは効果的にボイトレを行うことができます。

(ただし、「チェストばっかり」ではもちろんダメで、それが昨今の「裏声」や「ミックスボイス」ブームの原因となるわけだけど。)


でも、アマチュア声楽界隈とかでは、「適切な共鳴、適切な声帯まわりの筋肉の働きが出来ていない悪いチェストボイス」のことを「地声」と言う習慣がある人がけっこう多くて困る。

で、この習慣というか偏見、けっこう根強くて困るときがある。

他の語彙で言うと、「喉声」とか「(悪い意味で)喋り声」とか「(悪い意味で)生の声、飾らない声」とか「(悪い意味で)幼い声」などと言われる声を「地声」と言っちゃうわけですねえ。

なんとなく地声について検索してみたら、地声の対義語を「キャラ声」としている界隈もあるようで、それは盲点だった。

このように定義すれば、そりゃあ「地声は使ってはダメ」ということになりますよね。


確かな定義なんてたぶん存在しないので、個人的に使う分にはどうでもよいのですが、定義の違う人同士でわかりあうのは非常に大変なので、

「私の思う『地声』と、この人の言う『地声』って違うものかもしれない!」

という意識は常に持っておいた方がいいと思います。


あとはまあ、

「地声で歌っちゃダメー!!」

みたいな後者的な言葉、「言葉だけが先行しちゃってる感」があるので、ネットとかアマチュア指導者に習うときは気をつけた方がいいですよ。

「喉声」になるようにボイトレするのは根本的によろしくないけど、「チェストボイス」はそれなりに鍛えなきゃならんし。

なんというか「地声アレルギー」状態になってしまって、しっかりしたチェストボイスが出せずにミドルボイス音域から急激に元気になるとか、全体的に声帯の接触が軽すぎてパワーの無い発声になっちゃうとか、そういう感じの合唱出身の人をよく見かけるんだよなあ。



関連エントリー


「地声」の定義・対義語は?…けっこう人によって違うから、「発声用語」には要注意! - 烏は歌う


ミドルボイスの呼び名問題。 - 烏は歌う


その他、「用語の解説」タグに色々。



余談


なんとなく、この記事を下書きにぶち込んで放置していた時期にたまたま目に入って、ちょっと関係あるかもなーと思ったホッテントリ記事。

この人のコラム好きです。


「リスク」や「ケア」の言い換えが不可能な理由とは? | 冷泉彰彦 | コラム&ブログ | ニューズウィーク日本版 オフィシャルサイト

 例えば「リスク」を「危険」という「普通の漢語」にしてみましょう。そうすると、金融商品などの場合は「元本割れの危険のある商品」になりますし、企業経営の場合は「商品寿命短命化の危険を冒した新しい販売戦略」などということになります。

 どうでしょう? そんな怖い金融商品に投資するのはイヤだ、とか、そんな危険性のある経営方針を提案するなんて株主を軽視している、そのような拒否反応が、それこそ高齢者から飛んできそうです。どうしてかというと、「危険」という漢語には「ネガティブ(「否定的」では強すぎますね)なコノテーション(言外のニュアンス)」が付いてしまっており、それが漢字独特のビジュアルなイメージとして払拭できないからです。


この「地声アレルギー」問題も、なんとなく「地」という漢語のコノテーションが云々かんぬんしている気がしている。


 勿論、何でもカタカナ言葉にすればいいというのではないのは分かります。言語は変化するものであっても、変化に対して追いつけない人は切り捨てて良いとは言えません。また、カタカナ言葉に関しても、「ニュアンスをニュートラルにする」だけでなく、「複雑なニュアンスを付加する」方向で使われていたり、そのために正確な意味がぼやけている場合など、困った問題もあります。

 基本としては、漢語にしても、カタカナ言葉にしても、「1つの概念語で伝えたような気になってしまう」ことの危険性を理解して、複雑な概念に関するコミュニケーションはできるだけ「言い換えによる念押し」など「フルセンテンスでの確認」を取ることが必要だと思います。


要するに、こういうことですよね。

[ボイトレ][用語の解説]それじゃあ「地声」「裏声」って一体なんなのか問題。

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前回に引き続き、いわゆる「声区」に関するお話。

過去にも似たようなことを書いていて、ほとんど同じようなことを書くつもりなのです。

が、私の知識がアップデートされてたり、詳しく話すつもりの濃淡によって解説の切り口が違ったりするので、微妙に内容は異なるかもしれない。



現代的な意味での、チェストボイス・ミドルボイス・ヘッドボイス・ファルセット


「声の出し方の分類」(声区)について、「地声」と「裏声」という分け方は、身近なものではありますが、やや大雑把で感覚的かつ情緒的過ぎて、あまり詳しい話をするときには向いていません。

そこで、現代的というか科学的というか、そんな感じの「声の出し方の分類」の方法を、すっごーく大雑把に説明すると、

「チェストボイス」「ミドルボイス」「ヘッドボイス」/「ファルセット」

という3+1区の声区に分けるのが一般的です。

「ファルセット」だけ区切られているのは、それが他のものと比べて特に変わった発声法をする声区だからです。


・チェストボイス


声帯の全体が、比較的厚さを保ったまま開閉運動を起こし、振動しているときの声。


男声の場合、だいたい「最低音からmid2E〜F#(E4〜F#4)」くらいまで出せる声。

女声の場合、だいたい「最低音からhiA〜B(A4〜B4)」くらいまで出せる声。

この、チェストボイスでは出せなくなってくる音の高さを、「第一換声点」とか「1stブリッジ」とか言ったりする。


・ミドルボイス


チェストボイスより、声帯が薄くなり、かつ開閉運動を起こして振動する部分が減った(半分程度になると言われている)、チェストボイスより高音が出せる状態で出す声。


男声の場合、だいたい「mid2E〜F#(E4〜F#4)からhiA〜B(A4〜B4)」くらいまで出せる声。

女声の場合、だいたい「hiA〜B(A4〜B4)からhiE〜F#(E5〜F#5)」くらいまで出せる声。

ちなみに、男声の場合は、この声区をもう「ヘッドボイス」と言ってしまう場合も多い。

チェスト・ミドル・ヘッドの3区分にする場合、このミドルボイスではもう出せなくなる音の高さを「第二換声点」とか「2ndブリッジ」とか言ったりする。


・ヘッドボイス


ミドルボイスより、さらに声帯が薄く引き伸ばされ、さらに開閉運動を起こして振動する部分が減った(1/3か1/4程度になると言われている)、ミドルボイスよりさらに高音が出せる状態で出す声。


男声の場合、だいたい「hiA〜B(A4〜B4)からhiD〜E(D5〜E5)」くらいまで出せる声。

女声の場合、だいたい「hiE〜F#(E5〜F#5)からhihiA〜B(A5〜B5)」くらいまで出せる声。


・ファルセット


上の三種の声と違い、声帯が「不完全な開閉運動」を起こす(声帯の隙間が、ほとんど閉じきることがない)。

さらに、声帯の「表面だけ」が振動するという点でも、上の三種の声とは大きく違っている。

そのような特徴から、弱々しく、息漏れの非常に多い声にしかならない。


ファルセットの最低音、最高音については色々と言われていて、

「ファルセットの方がヘッドボイスより高い声が出せる!」って言う人もいれば、「ヘッドボイスの方がファルセットより高い声が出せる!」と真逆のことを言う人もいます。

最低音に関しても、あんまりハッキリはしていないけれど、とりあえず第一換声点の5度下くらいまでは出せるかなー。

そういう感じで、なかなか実体がないのがファルセット。


…と、まあ、ここまで書いてきましたが、これはあくまで「一例」でございまして。

人によって言っていることが微妙に違うことは多々あるんですよねー。

なので、この辺の話題に関しては”できるだけ「言い換えによる念押し」など「フルセンテンスでの確認」を取ることが必要”なのではないかなーと思います。前回のまとめ同様。



「地声」と「裏声」


で、「地声」と「裏声」の話に戻しますと。

上の4声種のそれぞれが、どのように「地声」「裏声」に対応するかと言うと…

「割とみんな適当に使ってる」

というのが実際です。はい。

「みんなに通じる共通の定義」みたいなものは、あまりないです。はい。


まあ、そもそも、「地声」「裏声」なんて言葉は「専門家が厳密に定めた専門用語」ではなく、「なんとなく広まった感覚的言語」ですので、厳密な「定義」なんて無くて当たり前ですよね。


とりあえず、

「チェストボイス」が「地声」に分類され、

「ファルセット」が「裏声」に分類される、

というのは、感覚的にも概ねみんなそう思うところでしょう。


難しいのは、「ミドルボイス」と「ヘッドボイス」を「地声」と「裏声」のどっちに分類すべきか、という話ですね。

まあ、そもそも元々が全く別な概念なので綺麗に当てはまるはずがないのですが。

「ミドルボイス」「ヘッドボイス」は、ファルセットと違って声帯がしっかり開閉運動を起こし、チェストボイスと基本的に同じ仕組みで音が鳴ることから、原理的には「地声」であるとも言えます。

「地声/裏声」ではなく「実声/仮声」という言い方をすることがありますが、この場合「ミドル・ヘッドボイス」は声帯の開閉運動という「実」をともなった声であり、「実声」であると言えるでしょうね。


しかし、感覚的には、「ミドル・ヘッドボイス」を「裏声」であると思ってしまう人も多いでしょう。

未熟なうちは、チェストからミドル・ヘッドに移行する場合に「声が裏返ってしまう」ことが多いですよね。

で、感覚的には、というか「裏声」という言葉のイメージ的には、「声が裏返った先」は「裏声」…と思ってしまいますよね。

なので、「ミドル・ヘッドボイス」を「芯のある裏声」とか言ったりする人もけっこういます。

(面倒くさいのは、「声帯を強めに寄せたファルセット」も、ときどき「芯のある裏声」と言ったりするので、どっちのことを言っているのか、一言ではなかなかわからないということですねえ。経験上。)


また、発声の実力が上がると「ミドルボイス」は「チェストボイス」とあまり声質の聞こえ方を変えずに出すことができるのですが、「ヘッドボイス」はなかなか「チェストボイス」と同じクオリティでは出せない人も多いですね。

そこで、聞こえ方の印象の違いから

「チェストボイス+ミドルボイス+(力強いヘッドボイス)」=「地声」

「(軽いミドルボイス)+ヘッドボイス+ファルセット」=「裏声」

というややこしい分け方をしている人もいます。

(「カラオケ音域データ」みたいなサイトは、こういう感じの分類方法が多くて困ることがある。)


とまあ、「地声」「裏声」の分け方って本当に曖昧なものなんですね。

だから、あんまり詳しい話をしたいときには使わない方がよい言葉です。

また、「地声/裏声」という区別を使う場合、またはだれかに使われた場合には、繰り返しになりますが、”できるだけ「言い換えによる念押し」など「フルセンテンスでの確認」を取ることが必要”なのではないかなーと思います。

[ボイトレ][用語の解説]「響き」の「位置」とチェストボイス・ヘッドボイス。

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チェストボイスとか、ヘッドボイスとかの用語問題についてもう一題。



おさらい


「チェストボイス」とは、声帯が分厚く接触し、声帯の全体が振動するときの声。

「ヘッドボイス」とは、声帯が薄く引き伸ばされ、声帯の一部だけが振動するときの声。


このように、「声帯の振動の様子」が違う…というのが、最近の声の分類の仕方。



「響き」の「位置」とチェストボイス・ヘッドボイス


よく、

「チェストボイスは胸に響かせる声だよー」

「ヘッドボイスは頭に響かせる声だよー」

みたいな説明をされることがあります。

…これがけっこう、根本的な誤解の元になってることがあるんですねえ。


まず、第一に理解しておくべきは、科学的な意味で「胸」や「頭」を発声の工夫によって特別に共鳴させたり、特定の場所や方向に「当てる」ことはできない、ということですね。

よくまあ、「もっと頭に響かせて!」とか「声を頭頂部から出して!」とか「もっと声を後ろに回して!」とかいう指示がアマチュア合唱界隈では飛び交いますが、あくまでイメージの話で、実際にそんな響かせ方をするのはちょっと無理。

あくまで、「胸や頭に響いているように感じることがある」「振動を感じることがある」ってだけの話なので、「響きの感覚」だけを中心にボイトレを考えていくと、色々と間違ってしまいやすいです。


「共鳴させる場所を変えることによって、声の様子が変わってくる」のではなく、「声帯自体や、そのまわりの筋肉の働きが変わることによって、共鳴する場所が変わる感覚がする」と考えるのが、より科学的というか現代的な考え方。

もちろん、声の状態を知ったり、使い方を学ぶための「手がかりの一つ」として、「響きの位置の感覚」は重要であることは間違いないのですが。


どんなに「頭に響かせよう、響かせよう」としても、声帯が適切な状態にならない限り、(現代的な意味での)ヘッドボイスはなりません。

チェストボイスや、ミドルボイスも同様。


また、響きを「どこ」に「どのように」「感じる」かどうかというのは個人差が大きいというのも、大きな問題ですね。


例えばですね、

「酒の飲み過ぎで、主に胃のあたりが大変なことになっている」

というときに、

「腹」が痛い、と「感じる」こともありますし、

「胸」やけがする、と「感じる」こともありますし、

「喉」まで吐き気が来ている、と「感じる」こともありますよね。

…全然違うことを言ってますけど、どれかが正しくてどれかが間違っているということではありませんね。

また、私の「なんとも言えない具合の悪い感じ」を、100%言語化してだれかに伝えることは基本的には無理ですし、私と誰かが同時に「腹が痛い!」と言ってもそれが「同じメカニズム、同じ症状の腹痛」なのかどうかは詳しく診てみないとよくわからないわけです。


「響きの位置の感覚」にもとづいて発声に関する詳しい話をするのもこんな感じで、「頭に響かせる声」とか「胸に響かせる声」とか言っても、けっこう漠然としてしまうことが多いのです。

(声帯の状態的に)チェストボイスを出しても、確かに胸のあたりに強く響いているような感じがするのですが、感じようと思えば頭であったり、胸を通り越してお尻や足の裏に振動を感じることもできるのです。

(声帯の状態的に)ヘッドボイスを出したときも同様に、いろんな所に振動を感じることが可能。

逆に言えば、「○○に共鳴を感じたから、この声は○○ボイスだ!」などと証明することは不可能です。


だから、

「チェストボイスは胸に響かせる声だよー」

「ヘッドボイスは頭に響かせる声だよー」

みたいな教え方は、手っ取り早く「わかったつもり」にするためには便利なんだけど、問題もあるということは知っておいた方がいいかもしれません。



この辺を巡る歴史(てきとう)


・古典的な意味での「チェストボイス」「ヘッドボイス」


とりあえず、ずっと昔は「頭」や「胸」(や、もっと細かい具体的部位、マスケラ、うなじ、鼻先、頭頂部、などなど…)に「ほんとうに共鳴が起こる」と思われていました。

で、ボイストレーニングと言えば、この、「共鳴の位置」をコントロールすることが最も大切だとする時代があったというか、そういう流派が主流になった時代がありました(ということにしておきましょう)。

このような、

「頭に共鳴させた声=ヘッドボイス」

「胸に共鳴させた声=チェストボイス」

という考え方は、それなりに効果もありましたが、感覚というものの「曖昧さ」や「言語化の難しさ」や「人それぞれ性」によって、一種の「ドグマ」と化してしまうこともありました。


・やや現代的な意味での「チェストボイス」「ヘッドボイス」


で、古典的な意味での「声の響きの感覚に頼ったボイストレーニング」の問題を解決しようと、

「頭だとか胸だとか、身体の特定の位置に響かせようとしたとき、実際に身体に何が起こるのか?」

について研究したのが、フースラーという人でした。

ボイストレーニングに多大な影響を及ぼした人なので、名前くらいは知っておいて損はないと思います。

で、フースラーさんは、声帯や発声に関わる筋肉の働きについて解明しましたが、

「声帯を閉じる筋肉」と「声帯を引き伸ばす筋肉」の協働

が発声にとって非常に重要であるということがわかりました。

そして、

「頭に響かせよう(ヘッドボイスを出そう)とすると、声帯を引き伸ばす筋肉が働きやすい」

「胸に響かせよう(チェストボイスを出そう)とすると、声帯を閉じる筋肉が働きやすい」

ということがわかりました。

※説明の都合上、かなり省略してます。実際は、7箇所に分けてます。

なので、これをそのまま利用して、

「声帯を引き伸ばす筋肉(最近はよくCTマッスルとか言う)が主体の声=ヘッドボイスorファルセット」

「声帯を閉じる筋肉(TAマッスル)が主体の声=チェストボイス」

という言い方をする人がいますね。

※ただし、フースラーはこういう声区の分け方はしていないので要注意!


・現代的な「チェストボイス」「ヘッドボイス」


冒頭に書いたので省略。

CTマッスルやらTAマッスルやら、その他たくさんの「声帯○○筋」やらの働きによって、声帯にだいたいこのような変化が起こることがわかった。



「混乱」を避けるために


とまあ、今日まで何回かに分けて、色々とたっぷり「チェストボイス」だの「ヘッドボイス」だの「地声」だの「裏声」だの、その辺の用語についての「混乱」について書いてきました。

「統一された定義」というものがほとんど無いと言ってしまって構わないような無法状態なので、この辺について話そうとすると、非常に困ることが多々あります。


なので、この辺の言葉に出遭ったら、繰り返しになりますが、

”できるだけ「言い換えによる念押し」など「フルセンテンスでの確認」を取ることが必要”

になります。

自分が使われたときも、使うときも、「同じ言葉なんだから、同じ現象を表しているのだろう」という予断は捨てた方が身を助けますね。

その上で、発声に関する勉強を日々重ねて、具体的に何がどのようになっているのか、世の中にはどのような考え方があるのか、知ろうとすることが大切なのかなー、と思います。

[ボイトレ][雑記]最近たまに考えていること。

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「歌が上手い」「歌唱力が高い」とはどういうことか。


おおむね

A.声という楽器の扱いが上手い

B.「音楽的に正しい」演奏ができる

C.「それっぽい」演奏ができる

の3点で説明できるかな、と思っている。



A.声という楽器の扱いが上手い


きちんとした発声ができるかどうか、とか。

音域だとか声量だとか声質だとかを、幅広く連続的に、安定して思い通りに使えるかどうか、とか。

難しいリズム、メロディー、ハーモニーを技術的に歌えるかどうか、とか。

その人の声を「良い楽器」として調整できているかどうか、とか。

滑舌やら言葉の処理やらは上手くいっているかどうか、とか。


B.「音楽的に正しい」演奏ができる


語弊がありそうな言い方で敢えて言うと、「楽譜通りに正確に歌えるかどうか」。

正しいリズム、正しいメロディー、正しいハーモニーで歌えるかどうか、とか。

適切な音高、適切な音量、適切な声質で歌えるかどうか、とか。

音楽のなかにある「仕掛け」を、きっちり「仕掛け」として成立させられているかどうか、とか。


C.「それっぽい」演奏ができる


「表現力」とか「雰囲気」とか「フレーバー」とか言われるもの。

その音楽の「ジャンル」特有の「お約束」を実行できているかどうか、とか。

その奏者の「キャラクター」「個性」「感情」などと呼ばれるものを上手く表現できているかどうか、とか。



…基本的には「全部が優れていれば、文句なしに歌が上手いと言える」という話になりますが、人間の能力って限られてるし、練習する時間とかも限りがあるので、なかなかそうはいきません。

3要素は必ずしもトレードオフ関係にあるわけではありませんが、「あちらを立てればこちらが立たず」という状況になることは非常に多いです。


歌うときには、これらのバランス感覚というものが非常に重要になってきます。

どれを優先して、どれを妥協するのか。

どのようなバランスだと自分を生かせて、どのようなバランスを自分以外の人間は求めているのか。

この辺は突き詰めるとドラッカー先生の範疇になってきますが。


また、気をつけなければならないのは、弱点要素が「ボトルネック」になっていないか。

・Aが足りなさすぎて、正確に歌うことができないし、個性も出せない

・Bが足りなさすぎて、いい声も「うるさいだけ」になっちゃうし、感情表現なども音楽と分離しちゃって効果がない

・Cが足りなさすぎて、美声で正確に歌われても「なんかちがう」感が漂う

みたいなことがよくあるので、ある程度、弱点を補うことも大切です。


歌の「トレーニング」を考えていく上では、自分が「今現在どのような能力のバランスになっていて」、「どの要素を伸ばしたいのか」の2点を考えることが大切です。

どの要素を伸ばしたいのかによって、やるべき練習って全然違いますからね。

トレーニングは、要素を可能な限り絞って取り組むのが効率的なやり方です。


他人の歌を評価したり、他人の評価を受ける際にも、この3要素は頭に入れておくといいかも。

この3要素の「どれを重視するか」で、歌の上手さの評価って全然ちがってくるわけです。


例えば、自分のA的なテクをひけらかすための超絶技巧曲とかをやってる人に対して、「音楽性が無い」とか「心情が感じられない」とか批判しても、まあ意味の無い批判になりがちなわけですな。

だってもともとそういうものなんだもん。

逆に、C的なキャラクター性を表現したいところのヘタウマソングを「音程などが悪い」だの「発声の技術が低い」だの言っても、ピントのずれた批評になりがちである。

だってもともとそういうものなんだもん。

なんというか、野球のピッチャーを打率で評価したり、野手をエラーの少なさだけで評価したりはしないだろ、みたいな気分になることがある。

まして「フリースタイルフットボーラー」を「こんなことができたって、サッカーの役には立たないぞ!」と言ったりはしないよな。


基本的にどの要素を重視して歌を評価するかは、好みの問題ではある。

コンクールみたいな「公平性」とか「透明性」が求められる評価では比較的客観的に評価しやすいBがメインに見られやすいとか、内輪で盛り上がるタイプの音楽では「通」であることを示すCアピールが奏功しやすいとか、そういう傾向はある。


特にオチない。

[発音・滑舌][ボイトレ]久しぶりに、滑舌に関する記事を。

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過去に、はてブのホッテントリで見た記事


滑舌が悪くて悩んでる奴、俺が治し方を教えてやる | ライフハックちゃんねる弐式


「心理的ブレーキ」という独自用語(?)が引っかかるとわけわからなくなりそうな感じだけれども、概ねいいこと書いてある。

ただちょっと「喉開く」とか「腹から声出す」の概念はちょっと妖しいし、母音関係の認識がよく見えないので、マトモなボイトレ受けた人なのかはちょっとわからない。



なんで滑舌が悪くなるのか


私の分類だと、「滑舌が悪い人」というのは、

1.正しい発音をしっかりやろうとすればできるのに、やってないだけ

2.正しい発音の仕方が(感覚的・知識的に)わかってない、誤解している

3.正しい発音をするための能力(筋力など)が足りていない

4.身体的な性質のせいで、正しい発音が不可能

…という4区分。


で、ほとんどの人は1〜3の中に入るわけです。

諦める必要がある、4の人ってそんなにいない。


1は「意識の持ち方」を変えるだけで治るし、2の人は「意識の持ち方」に加えて「勉強」、3の人はさらに「継続的な練習」があれば、だいたい治る。

「意識の持ち方」という言葉にしてしまうと、非常に曖昧でどうとでも取れるのは問題だなあ。

ただ、「心理的ブレーキ」というよりはわかりやすいような気もする(自画自賛)。

ブレーキ踏んじゃってる場合もあるし、アクセル踏めてない場合もあるし、クラッチ踏んじゃっている場合もあるからね。アクセルを踏むつもりなのに間違ってブレーキ踏んでる場合もあるし、怖くてついついブレーキ踏んじゃう場合もあるし(比喩表現)。



1.正しい発音をしっかりやろうとすればできるのに、やってないだけ


こういうタイプの人はだいたい、

「このくらいやれば、聞こえるだろう」

みたいな意識の元に発音している。

慢心というか、甘えというか。

だから、その発音にかける力(調音)が足りなくて、発音が不安定・不完全になって、滑舌が悪くなることが多い。

もしくは(俗流日本人論によれば)日本人特有の、

「こんなに大げさに発音したら恥ずかしい!目立っちゃう!変に思われちゃうかも!」

みたいな感情によって、発音のための動き(調音)をセーブしてしまって、結果として発音が曖昧になる。


こんな感じで「できるのに、やれない」「できるのに、できないと思い込んでしまう」ということはよくあるので、客観的に自分の声をチェックするのは非常に大事ですね。

できればマトモな先生にチェックしてもらうのが一番いいのですが…。

それができない場合でも、最近なら、スマホの録音機能とかでも十分な音質で手軽に録音できますよね。

録音した声を聞くと、どうしても「こんなの俺の声じゃない!間違っているのは機械のせいだ!」と言いたくなりますが、だいたい間違っているのは自分の方なので、ありのままを受け入れて改善の手助けにしましょう。


チェックするためのフレーズとしては、お手軽にやりたいのなら、

日本人が苦手な行。ラ行、サ行、ナ行、タ行が四天王。

の4つの子音が入っているフレーズを適当にチェックすればいいと思います。

そう言えば、過去に書いた、

「モテ声」への道…。 - 烏は歌う

という記事で使ったツールでは「素敵な声の人が好き」という例文でした。

ラ行以外は全部入ってますね。



2.正しい発音の仕方が(感覚的・知識的に)わかってない、誤解している


さて、こういう場合。

まずは「客観性」が必要なのは、上と同様です。


その上で、「じゃあどうすれば正しい発音ができるのか」「どのように舌や口を動かしたらいいのか」というのは、地道に勉強するしかないです。

私が知ってる中で最も具体的にまとまっているのが、「IPA(国際音声記号)」という考え方。

国際音声記号 - Wikipedia

この辺りをしっかり勉強すると、「じゃあどうすれば正しい発音ができるのか」「どのように舌や口を動かしたらいいのか」というのがわかります。


もう少し簡易にまとめるとこんな感じになるかな。

合唱講座 第45回「OCM式日本語50音」発音


そういうのを頭に入れた上で、冒頭に紹介した記事のように、

ラ行は舌を上あごに当てろよ。んで発声。できないはずがない。

カ行は、一瞬のどをしめてそこの隙間に息がいきおいよくでる。ハ行になってしまうということは、そのしまりが甘すぎるあるいはそもそも しまってないから。

みたいな感じで分析していき、それに応じた正しい発音方法を身につけていくしかないわけですね。

こういう分析は、ネタ的な感じで、ネット上にはけっこう転がっている。

おいたんとは (オイタンとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

だおとは (ダオとは) [単語記事] - ニコニコ大百科

また、ネット上の親切な人に聞けば、教えてくれることも多いだろう。

ただし、ネット上に書いてあることは「完全素人レベルからプロレベルの指摘まで玉石混交」なため、あんまり信用しすぎてはならず、リテラシーを要する(もちろん、このブログについても)。



3.正しい発音をするための能力(筋力など)が足りていない


正しいやり方を理解できても、できない。

正しい発音の意識、ボディマッピングはできているはずなのに、流れの中ではなかなかできない。

…そんな場合は、「正しい発音をするための能力」が足りていない可能性もあります。


代表的な例を挙げると、

・息のコントロールが上手くいっていない、いわゆる「息の支え」ができていない

・調音器官(喉、舌、あご、唇)の筋力の強さや、柔軟性が足りていない

あたり。


基本的には、「正しい発音」をしようとしていくなかで、いつのまにか勝手に鍛えられてる、ってのが望ましい。

ただ、それじゃ効果が足りない気がする…などという場合には、特別なトレーニングが必要になる。


息の支えについてのトレーニングは、こういうのとか。

ブレスの具体的なトレーニング方法。 - 烏は歌う


調音器官の運動については、本当に色々あるけど、とりあえず「舌の運動」でググれば山ほど出てくるので、そういうのを試してみるのもアリだと思います。

ただ、変な癖だけ身につけてしまっても仕方がないので、ただの「筋トレ」で終わらないように注意する必要はある。


あとはまあ、ここまでしなければ治らない人って実はそんなに少なくて、こういう練習しているうちに、

「…あ、俺って単なる1(正しい発音をしっかりやろうとすればできるのに、やってないだけ)だった」

と気づくことも、非常にありがちです。

[発音・滑舌][歌唱力][ボイトレ]どの程度、歌詞を聞かせるつもりなのか。

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滑舌について前回は書いたわけですが、「音楽」「歌」における「滑舌の良さ」ってのは、話が少々難しくなります。

とっても大事だけれども、それだけを考えてもどうしようもない感じ。



そもそも、歌い手に滑舌の良さって必要?


先日、私、ロックフェスティバルに行ってきました。

7月にはJOIN ALIVE、そして8月にはRISING SUN ROCK FESTIVALの二つですね。

主なお目当てはチバ(The Birthday、The Golden Wet Fingers)とタイジ(THEATRE BROOK)だったのですが、いやー、楽しかった。

朝から晩までロックンロールに溺れる体験!

年に一度のアウトドア!

屋台!多種多様な飯!屋外ビール!

テンション上がらないわけがないですねー。


で、ロックフェスみたいな屋外ステージで、しかも観衆みんなで「モッシュ&ダイブ」な環境ですと、まあぶっちゃけ歌詞なんて聞こえませんわな。

もちろん、ボーカル一本で勝負!みたいなアーティストの場合はそれ用のセッティングにはなるのだけど、やっぱりCDに比べれば7割くらいしか言葉が聞こえてこないかなー。

普通のロックバンドスタイル(何が普通かは難しいところだが)だと、それこそ初見で歌詞を聞き取るとか無理ゲー状態。知ってる曲でも危うい。


でも、何言ってるのかわからなくても、みんな盛り上がる。

何言ってるのかわからなくても、それ以上に伝わるものがある。楽しめるものがある。


何言ってるのかわからなくても、特に「音楽的価値」が下がったりはしないし、「伝えたい『何か』が伝わってない」なんてことは無いわけです。

※もちろん、そういうのが嫌で音楽はCDで楽しみますライブ行きません、みたいな人もいるけど。



滑舌の良さが必要な場合と、そうでもない場合がある


歌手にとって、「何かを伝える手段」として「歌詞」というのは非常に大切ですね。

だから当然、「滑舌の良さ」や「言葉の明瞭さ」というのはあったほうがいいに決まっています。


しかし、歌手にとっての「何かを伝える手段」って、それだけでは無いわけです。

音楽(リズム・メロディー・ハーモニー)自体も「何かを伝える手段」ですし、声質や細かい歌いまわしなどの「表現」と呼ばれるものや、さらには「表情」や「動き」だって「何かを伝える手段」なわけです。


どちらも、というか、どれも大切であって、「何を優先するか」が大切ですね。

で、これらの要素ってのは、必ずしもトレードオフになるとは限らないけれども、「あちらを立てればこちらが立たず」状態になることは非常によくあります。


この辺に関しては昔からよく考えることがあって、昔ブクマした記事では、作曲家の長谷部雅彦氏がこんなこと書いてました。

合唱演奏で伝えたい何か: アルス・ポエティカ〜音と言葉を縫いつける

皮肉なことに歌詞の内容を直接的に伝えようと思えば思うほど、歌詞は音楽に乗せないほうが効率が良くなります。ありていに言えば、話したほうが良く伝わります。

もちろんセリフやナレーションの入った合唱曲もありますが、そういうのはむしろ演出付きの傍流ものというイメージは強い。実際には多くの邦人合唱曲が、ある程度のストーリー性を持った詩においても、普通に音楽が付けられ、聴衆に良く理解されないまま歌われているのが実態ではないでしょうか。

ここで私が言いたい点をまとめれば、ロジカルで具体的な内容を伝えるには、音楽に乗せないほうが分かりやすく、逆にエモーショナルな漠然としたイメージを伝えたいときは音楽に乗せたほうが聴いた者を高揚させるということです。

音楽的効果を求めてハモリを重ねまくったり、パート間で言葉をずらしまくったり、メロディーをダイナミックにしたり複雑にしたり、リズムを極端に速くしたり遅くしたり…なんてことをすれば、「言葉」が聞こえなくなるのはある意味当然。


これはもう構造上の問題だから、「滑舌」レベルの個人的ミクロ的な努力じゃどうにもならないことも多い。


合唱じゃなく、それこそロックフェスで歌われるようなポピュラーミュージックでも上記のような問題は同様に出てくるし、更には「声をどのくらい加工するのか」とか、「どのくらいシャウト的な歌い方をするか」とか、そういった要素も「やればやるほど『何か』は伝わりやすくなるけど歌詞は聞き取りにくくなる問題」として現れますね。


だから、

「何をどのように伝えたいのか」

「そのために最適なバランスはどうなのか」

というのを、歌い手は常に考えなければいけませんね。


ロックフェスで「何を言ってるんだかわからないバンド」も、各種音量のコントロールやボーカルの加工(できるだけボーカルはエコーとかかけずに素直に作りつつ、子音は立つようにその辺の周波数帯強調して、かつ周りの楽器はその辺の周波数帯をできるだけカットするなどなど)をした上で、ボーカルには「滑舌最優先」で歌わせ、編曲もそのように(歌詞の聞き取りやすいスピードに変更、歌詞をそれ以外の動きが邪魔しないアレンジ等々)すれば、技術的には「何言ってるかはわかるバンド」にはできるはずです。

しかし、それをやってもあんまり意味無いわけです。


私も「歌に滑舌は不要だ!」と主張したいわけではありません。

色々な動きを抑えてでも、歌詞をしっかり聞かせたいときもありますし、そういうときには「言葉の明瞭さ」って生命線になりますからね。

また、「何を言ってるんだかわからないバンド」でも、100%歌詞を聞かせない・聞こえないというわけではなく、「ちょっと聞こえてくる印象的なフレーズ」が、ライブ会場の一体感をつくり上げるために大事だったりします。

演者も観客も色んな意味で大暴れの中、歌詞の中の特別に印象的なワンフレーズを聞かせる…ってのも、けっこう高度な発音技術がいるわけでして。

そんな感じで、滑舌ってのは「最低限」はなくてはならないものですし、あったらあっただけ便利なものですが、「滑舌さえ良ければ、伝えたいように伝わる」なんてことは無いな、というのは大事なことなのでたまに思い出しておきたいですね。



具体的にはどう考えるか


上の記事をさらに引用すると、

●例えば「大地讃頌」のような曲

ベタな例ですいませんが、誰でも知っている邦人合唱曲の名曲。これこそ合唱の基本的な力を効果的に表現できる希有な曲といっていいと思うのです。以前この曲について書いた記事はこちら。

この詩の持つ壮大なイメージには本当に圧倒されます。大地こそ人間の恵みの源である。その大地を愛そう、というメッセージは極めて普遍的で、動物としての根源的なパワーを刺激してくれます。

そう、このメッセージはロジカルなものでなく、政治的主張でもない、内容の具体性は欠けるけれどもエネルギー密度の高い感性の奥底に直接訴える強さがあります。

どんなに言葉を尽くしても、この曲では一言「母なる大地」という言葉を連呼するだけで、歌う側、聞く側にエモーショナルな感銘を与えることが出来ます。

このとき、歌詞を一字一句伝えるべき、と誰が考えるでしょうか。もちろん言葉は明瞭なほうが良いけれど、むしろ追求すべきはこの曲の持つ壮大さ、荘厳さをどのように声楽的に表現するかであり、迫力のサウンドこそこの曲にふさわしいと感じます。


●物語系

さて、上記の例と対極にあるのが、テキスト自体が一つのストーリー性を帯びているような楽曲の場合です。

仮にこのテキストに起承転結のような起伏があったとします。そうすると、音楽もこの流れで作られることになるわけですが、音楽の「転」の箇所にはテキストの「転」もあるわけで、この箇所のテキストをきちんと伝えないと、ストーリーが聴衆に伝わりません。

ここでは絶対的に歌詞を伝えることが必要になります。


と、まあ、大雑把に言えば

「ワンフレーズ」タイプの歌と「ストーリー」タイプの歌

があるわけですねー。

(上のブログでは宗教曲「ハイコンテクストタイプ」も紹介されてるけど、ここでは省略。)


とにかく印象的なワンフレーズだけは「言葉」として客と共有して、細部は総合的に「なんとなく雰囲気で」伝えるのか。

もしくは、きっちり全歌詞を「言葉」として客と共有して、そのための「音楽的工夫(をむしろ減らして、極力「話し」に近づける)」をするか。

この辺の選択が必要ですね。


で、それに応じたエネルギーの配分というのが、なにより大切になるわけです。

歌詞の「滑舌」を優先するのか、それとも「滑舌」を多少犠牲にしても他の要素に注力するのか。

音楽の精巧さを追求するのか、歌詞の正確さを追求するのか。

「一文字一文字の正確さ」を追求するのか、「それっぽい雰囲気」を追求するのか。

音楽のオマケに歌詞があると考えるか、歌詞の威力を最大化するために音楽があると考えるか。


これがちょうどよいバランス!なんて一言で示せるわけがなくて、多分どんな歌い手も一生考えていかなきゃならない問題だと思うけれども、たまにじっくり考えていきたい。



余談


今回のロックフェスで私がお目当てにしたチバもタイジも、どっちかというと「ワンフレーズ」タイプですね。

そもそも紙に書いた歌詞を読んでも意味わからんし、いわゆる「起承転結」とかそもそも存在しないことがほとんどなので、全部の歌詞をはっきりと聞かされても、そもそもよくわからんのだけども。

それでも、バンドサウンドの中で、あの声で歌われると、すごい感動する。

歌詞は意味わからんし、ある意味「ワンフレーズ」でしか届いてこないんだけど、その「ワンフレーズ」がフックになって「歌詞以上の広がりを持った何か」が心の中に叩き込まれる感覚がある。

音楽って、ライブって本当にいいなあ、と思う瞬間です。


「ストーリー」型の歌をよく歌う…、例えばBUMP OF CHICKENとか、すごいですよ。何年も前のRSRで一度見ましたが、すごかったですよ。

独自の世界を創りあげられるくらいの、歌詞のストーリーの強度が、まずすごい。

歌をきっちり「物語」として成立させてる。

その「ストーリー」を「歌・音楽」として聞かせられるようにするには、その歌詞自体を上手く伝えられるような歌い方の工夫、音楽的な工夫が必要なわけでして、それができるのがまずすごいなあと。

それでいて、「ワンフレーズ」的な聞き方をしても、きっちり要所で「刺さるフレーズ」があって、それが「刺さる歌い方」になっていて、やや激しいライブ的な演奏・聞き方をしても大丈夫なんですよ。

この辺のバランス感覚は見習いたいなーと思います。

[ボイトレ][表現力]表現力をつける方法と、「精神論と技術論の狭間」の話。

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よく言われる、「もっと感情を込めて!」とか「色気を出して!」いう言葉について


言いたくなる気持ちもわかるし、そうとしか言い様がない場合もあるんだけど、

「感情を込めるというのはどういうことで」

「どうしてやればそれが実現されるのか」

というのがわからないことには、どうしようもないですね。



「感情を込める」「色気を出す」とはどういうことなのか


具体的にはすごく説明しにくいことではあるのだけれど、

「声質や歌(リズム・メロディー・ハーモニー)に『絶妙な変化』を持たせることによって、歌の印象を変えること」

ということになりましょうか。


どんなに頭の中で強く感情をイメージできていようと、どんなに人生経験豊富な人であろうと、どんなに歌詞を研究して工夫をこらして感動的な世界を作ろうと、どんなにその人が「色気」にあふれたビジュアルであろうと、「歌」「声」として聞いた時に「聞き手に伝わるもの」が無いとダメ。


また、いくら「声質や歌」に変化をつけようと、それが歌い手の感情と真にリンクしてないと上っ面の表現に終わってしまいますし、表現だけが空回って違和感の元になりがちです。



具体的にはどうやるのか


具体的な方法としては、例えば「表情」や「動き」をつけること。


声に「表現力」を出すために、手っ取り早い方法。 - 烏は歌う


「顔芸」を全力で行い、「アクション」をつけることで、単なる脳内のイメージに過ぎなかった「感情」というものが、身体中の筋肉に影響を及ぼし声に影響を及ぼすようになります。

ただイメージするだけじゃ弱いので、実際に表情をつけるところからはじめてみると、声や歌いまわしが全然違ってきますよ。

また、頭の中では「ぼんやり」としかイメージできなかった感情も、実際に表情を作ってみると強くリアルに、実感や切迫感を持ってイメージできるようになったりします。


また、そういう話をちょうど、私の尊敬するボイストレーナーさんが書いていたので紹介しておきます。


偏屈ヴォイトレの辛口合唱論 第1回「女声合唱における色気の考察」  - ヴォイストレーナー チャトラ猫の原稿倉庫 - Yahoo!ブログ

結論を申しましょう。表現上の色気とは単なる技術です。重心や姿勢や視線にほんの少しゆがみを持たせることで可能な技術なのです。


…どうしても「真剣に」歌を練習していくと、直立不動でおカタイ顔になってしまいがちなんですが、それではどうやっても「色気」はでませんし、「ある種の感情」しか表現できなくなってしまうでしょう。

「重心や姿勢や視線にほんの少しゆがみを持たせる」ことによって、確実かつ簡単に、「声質や歌に絶妙な変化を持たせること」が可能になります。


また、試してみて欲しいのが、声楽家の山枡信明氏がTwitterで紹介していたこの方法。

山枡信明(@nobuyamamasu)/2012年09月05日 - Twilog


感情と「呼吸」を結びつけることで、「声質や歌に絶妙な変化を持たせること」を実現できます。

呼吸(をするときに働く筋肉群)が一度「怒りモード」「喜びモード」「悲しみモード」「感動モード」…に入ると、「歌」というものは必ず「呼吸の状態に応じた」声や歌いまわしになるので、「感情を込めた歌」が実践できます。

また、呼吸が一度そういうモードに入ると、呼吸に引きずられて「脳(感情)」もそういうモードになってくるんですよね。

で、「感情が呼吸を、呼吸が感情を強めていく」フィードバックが完成して、どんどん感情が込められていく感じになります。



精神論と技術論の狭間


言い古された言葉で言うと、「歌は心」です。

だから、「感情を込める」のは何より大事かもしれない。


ただ、ひたすら「精神論」ばかり強調しても、実際にそれを声にして歌にして「表に現す方法」をしらないと、何にもならないわけです。

また逆に、「表に現す」にはどうするかを具体的に考え過ぎて、小手先の技術ばっかりに走るようになってしまうと、本末転倒。


だから、こういう「感情をいかに表現につなげていくか」「感情をどのように歌に反映させていくか」の初歩トレーニングは、やれるとやれないでは大違いなので、必ずやっておきたいですね。


これがない状態で「精神論的トレーニング」を積み重ねても、それは単なる「想像」で終わってしまいます。

これがない状態で色々な「技術的トレーニング」を積み重ねても、「上っ面」の歌唱力で終わってしまいます。

自分のウチとソトをダイレクトに繋げているか、ときどきは思い出したいところですね。


[ボイトレ][呼吸]久しぶりに腹式呼吸の話。

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腹式呼吸とは、

「お腹が大きく膨らんだり縮んだりする呼吸法のこと」

って考え方は、けっこう誤解だったりする。


「声を出すのに必要な息の量ってのは、実はそんなに多くないので、大きく膨らませたり凹ませたりする必要はない」

(むしろ、そんなことをやったら呼気圧が強すぎて喉を壊す危険あり。)

「横隔膜の動きが『主』、腹腔のふくらみは『従』という意識でトレーニングした方がいい場合が多い」

…という観点から言うと、「お腹が大きく膨らんだり縮んだりする」という認識は、むしろ練習の邪魔になるかもしれない。


お腹を大きく動かして、「ほら、これが腹から声が出ているということだー!!」みたいなのは、わかりやすいけどけっこう色々と間違っている。



案外、腹は(見かけ上は)動かないこともある


横隔膜がいい具合に緊張を保ったまま動かせれば、いわゆる「腹から声が出ている」発声になるのです。

逆に、「腹の収縮膨張・凹凸」自体は横隔膜の働きの副産物的なもので、それを目的にやるものでもない。


たまに、

「着物では、帯でお腹を膨らませることができないから、胸式呼吸になる」

とかいうトンチンカンな説を稀に聞きますが、それはないんですな。

着物のようにお腹のあたりを締めて、見かけ上お腹の膨張収縮ができなさそうでも、横隔膜がしっかり働けば腹式呼吸になる。

むしろ、帯を押し返すような力が横隔膜に入ることで、横隔膜にほどよい緊張が生まれ、よりよく腹式呼吸ができる場合があります。

限界まで締めた状態だと、さすがに内臓が圧迫されて苦しいですが。


逆に、

「着物を着ていた頃の日本人は、息を吸うときも吐くときも腹圧を保ち、常に帯を押し返すような呼吸法をしていた。これは胸式呼吸でもなく腹式呼吸でもない、日本独特の呼吸法だ。」

みたいなのもたまに見ますが、それもちょっと違うかもしれない。

前半は間違いないんだけど、後半については、

・横隔膜使うんだから、それは「腹式呼吸」の一つだとして認識されてるよね

・西洋の発声法の中にも、吸うときも吐くときも腹を突き出す呼吸法はある、というかむしろ一般的な方だよ

と、私は思ってしまいましたがどうなんでしょう。


「腹式呼吸とは、お腹が大きく膨らんだり縮んだりする呼吸法のこと」

「お腹が大きく膨らんだり縮んだりすればするほどよい」

みたいな発想だと、お腹を締め付けることは絶対悪です。

しかし、実際はそうでもないので、そこまで気にするものでもないし、むしろ軽く締め付けた方がよく働く場合もあります。



この記事のきっかけエントリ。


声にはだれにでもスイッチがある 一発で声が変わる方法:永井千佳の音楽ブログ:ITmedia オルタナティブ・ブログ

「あーーー」と言いながら、肋骨(肺を囲っている骨)の一番下の骨の下あたりを「ぐいっ!」と押してみてください。 「あーーー(ぐいっ!)あ〜!あーーー」 と変化しましたね? 強くだそう、声を変えよう、と思わなくても声が変わった。 声の良い人は、このスイッチを入れてお話ししています。

だから、人前でお話しするとき、まずは、ちょっとお腹に軽く手を当てながらはなしてみると、声がかなり変わりますよ。お試しください。

日本の伝統「サラシ」が発声にも効果:永井千佳の音楽ブログ:ITmedia オルタナティブ・ブログ

横隔膜を意識するために、話すときはお腹に手を当ててサポートしてあげるのも、一つの手段です。 でも、人前で話すときなど、ついついしゃべることに夢中になってしまい、横隔膜の存在を忘れてしまうものです。 そういうとき、手のかわりにサラシを巻いて、横隔膜を意識できるようにすることはとても有効です。  

[ボイトレ][メンタル]練習のときに大切なこと、「リスク回避とスタンダード」 。

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なんとなく、サッカーの「城福浩」さんの記事を久しぶりに読み返したので記事を書く。

練習で大切なことは、サッカーも歌も同じだと思います。


チーム作りにおける「リスク回避とスタンダード」  :日本経済新聞



スタンダードを確立すること


一番印象に残ったのが、

チームとしてやるべきことの優先順位を練習の段階から精査していく。常に実戦を想定しながら「絶対にやってはいけないこと」「絶対にやらないといけないこと」「ミスしても許されるチャレンジ」を選手と一緒に作り上げていく。

という部分でした。


ミスしないように、間違ったことをしないように…ということだけを考えてると、「適度なチャレンジ」すらできなくなってしまって、パフォーマンスも落ちてしまうんですよね。

また、モチベーションも落ちる。


でも、じゃあ闇雲にチャレンジさせていけばいいかと言ったら、それもダメなわけで。

思いついたことを思いつくままにやっていくだけ、それに関して無反省なままでは、いつまで経っても上手くもならないし結果も出ない。

また、複数人でセッションする音楽の場合は、いつまで経ってもバラバラになってしまいますね。


だから、その辺のバランスがとても大切なんですが、


「絶対にやってはいけないこと」


「絶対にやらないといけないこと」


「ミスしても許されるチャレンジ」


という三点をあらかじめ決めておくというのは、すごくわかりやすくていい方法だと思いました。



「優先順位」を大切にする


スタンダードを「標準」を訳すと物足りない感じだ。「コンセプト」というと風呂敷を広げすぎの感がある。僕流の解釈ではスタンダードは「優先順位」になる。

…この言葉も非常にいいですね。

「標準」でもなく、「コンセプト」でもなく、「優先順位」。

私はよく「コンセプト」って言って風呂敷を広げ過ぎた感があるので、今度からは「優先順位」って言葉を使おう。


基本的に、「歌を歌う上で気をつけなきゃいけないこと」ってのは山ほどあるんです。

で、それを同時に全部気をつけるのは無理なんで、優先順位をつけてやらないとやっていられない。


また、「歌の評価基準」「何がどうだったらいい歌か」ってのも、山ほどあって、どんな歌だろうと見ようによっては良くも悪くもなりますね。

だから、「どのような価値」をまず求めていくか、優先順位をつけていく必要があります。


そういう積み重ねによって、「スタンダード」というものが出来上がっていくのでしょう。


関連エントリー


モチベーションと「成功率」について。あるいは適度な「チャレンジ」の重要性について。 - 烏は歌う


たまには失敗してみるのも、いい経験だよ。 - 烏は歌う


何かを「選ぶ」ということは、何かを「捨てる」ということ。 - 烏は歌う


歌唱力について、最近たまに考えていること。 - 烏は歌う

[ボイトレ][声量]音量は(そんなに)いらない。

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又聞きの又聞きをブログに書くのはそんなによろしくないのですが。


◆コブクロと桑田さんの言葉だと、ガゼン説得力が(笑)|★上手く歌うより、旨く歌おう!「歌の魔法」ブログ

先日、レッスンで生徒さんが、


「先生!この前、Mステで

 コブクロの小渕さんが言ってました!」



Mステで、コブクロとサザンがゲストトークしていたそうですが、

そこでコブクロの小渕さんが・・・


桑田さんの歌い方は、本当に小さく歌っていて、

あんなに小さく歌っているからこそ、

力強いパワフルな声を出せるし、

声帯に負担をかけずにずっと長い間

歌っていけるんですよね。


自分もついつい声の負担をかけて

スランプに陥っちゃったときは、

桑田さんの、あの <いかに小さく声を使うか>

って事を見習っている



・・・というようなことをお話しされていたそうです。


桑田佳祐と言えば、それこそ「力強い声の歌手」の代表例として出てくるような人物。


でも、実際にはそんなに「大きな声」というものでは歌っていないそうなんです。

むしろ、「小さく」「本当に小さく歌っている」とのこと。


私達はなんとなく「声量があるとすごいんだ!」「プロの歌手ならものすごい大きな声で歌っているはずだ!」みたいに思いがちですが、実はそうでもないことも多いんですね。



そもそも声量とは


声量ってのは、「声の大きさ」のことである、ってのが第一義。

「声の物理的な大きさ」は物理的に言えば音波の振幅の大きさで、デシベルという単位で示されます。

※やや大雑把な説明。


しかし、人間には「物理的な音の大きさ」と「耳や脳で感じる音の大きさ」が必ずしも一致しない、という性質があります。

例えば、音の高さ(周波数)によっても、音の聞こえ方が違います。

この周波数と音圧(音の大きさ)の兼ね合いで、実際に人間が感じる「音の大きさ」に近い指標になるのが「ホン」という単位。

※やや大雑把な説明。

他にも、「声質」だとか、「声の安定感」などによっても、全然「どのくらいの声量かという『印象』」は変わってきますし、声量のあるなしってのは実は非常に判断しにくい。


さらに、オンマイクの歌なんかだと、「マイクの使い方の上手さ」や「PAの音量調節の上手さ」なんかが、歌い手の声量よりずっとずっと大事だったりすることもありますし。


あとこれ完全に余談ですが、例えば「テレビの某カラオケ番組」とか、「声量がすごい!」とか「圧倒的な声量が!」とか言ってることが多いですが、なんでそういう言葉を多用しているかというと、

「声量という概念って実は非常にあやふやで、具体的かつ正確な判断がしにくい」

からなんですねー。

中身の無い言葉なんで、とりあえず言っておけばそれっぽくなるというか。

実際に「何デシベル」の声量が出てるかなんてマイク通してしまえばわからないし、そもそもそんなこと調べたところでなんの意味もないというか。

でもまあ、「声量がすごい!」と言っておけばなんとなくすごいんだろうなーという雰囲気を醸し出せて便利、みたいな、ね。


あと、こういうことを書くと、

「歌における『声量』とは、単なる音量の大小ではない!」

的な批判をたいてい必ず受けるのですが、じゃあなんなのでしょうか、という話になるわけで。

「単なる音量だけじゃなく、声質とか声の安定感とかPAの工夫とか会場の使い方とか色々な要素が組み合わさって『声量』というものになるんだよー」という話なら、全くそうだと思う、というか「そういうもの」だと私も書いているわけですが。

「○○だったら声量があると言える」「○○だったら声量がないと言える」みたいな判断基準が実は全く一定じゃなく、いくらでも主観や後出しじゃんけんで語れるから、「声量」って「単純に言ってしまう」のは、あんまり歌を「評価」「批評」するには向いてないですよーという話なんですがね。



「声量」が足りないと思ったら


などなどとグダグダ書いてきましたが、「声量」って実はそんなに具体的・絶対的なものではないので、

「声量が足りない気がする」→「もっと声を大きくしなきゃ!」

みたいな感じでトレーニングに向かうと、失敗することが多い。


特に、闇雲に「喉に力を入れたり」「吐く息の量を増やす」のは基本的にやらないほうがいい確率がものすごく高いので注意してください。


その上で、じゃあどうすればいいのか。

上に紹介したブログでは、例えばこんな解決法が示されています。

Q:「いつも声が聞こえないと言われる私は

 どうしたらいいですか?」



A:おそらく、声が小さくて聴こえにくい原因は、

声帯がちゃんと張っていないため、息がたくさん漏れてしまう

事が考えられます。


なので、声帯のフォームをもっと小さくして、

ちゃんと圧力がかかるようにすればいいワケです。


まずは、声帯のフォームを小さく出来なければ

いくら頑張って声を出してもムダになってしまいます。


ですから、息が漏れないように声を使っていく事ですね。


要するに、「息漏れのしない声なら、たとえ小さい声でもしっかり聞こえるし、大きな音量を出すことにもつながる」ということですね。

で、そのためには、むしろ「小さく、小さく…」という気持ちの持ち方でトレーニングした方がいい場合が多いんです。

小さく、「効率の良い」声を出す練習をすることが、「声量」を上げるにはとても大切。


マイク無しの環境を想定するにしても、有りの環境を想定するにしても、声帯が息漏れなしで上手く振動する状態を作ってやらないと、音量は上がりません。

また、息漏れの多い状態で気合で声を張り上げたり、スピーカーの音量を上げたとしても、聞きやすい声にはならず結局「どれほど音量が大きくても、声量が無いと思われてしまう状態」になってしまいがちです。

そして、その状態で「腹から声を出す」だの「喉をひらく」だの、抽象的なイメージにもとづいて身体に変な力を入れちゃうと、最悪。


なので、まずは「小さくても息漏れのない、効率の良い声を作っていくこと」が大切かと思います。

そうすれば、「小さく出しているはずなのに、普段より声量が出てる!?」「小さく出しているはずなのに、いつもより全然伝わってる!?」みたいなことが起きるかも。



その他


あとは、オンマイクなら「ちゃんと口とマイクを近づける」とか、大切。

たまに聞くのが、「マイクと口の距離が5mm離れるごとに音量が半分になる」という言い方ですね。

どのくらい正確な話なのかは知らないけれど、だいたいそんな意識でいるといいと思います。


オフマイクなら、ちゃんと「よく響く場所、位置」で歌えてるか、とか、「よく響く方向、角度」を向いて歌えてるか、とかを気にする必要がありますね。


あとは、歌とかの悩みではなく日常生活で「声が小さい」という悩みを持っている場合、

・声量が足りないのではなく「早口」

・声量が足りないのではなく「相手が聞く準備ができてないのに話し始める」

・声量が足りないのではなく「相手を見て話せていない」

・声量が足りないのではなく「最初から最後までしっかり言葉にできていない」

(おはようございます→…ぅあようござっ…)

…みたいな感じがほとんどですので、そういうところを改善して「相手を見て、しっかり最初から最後までゆっくり丁寧に声を出す」というところから始めたほうが良い場合が多いですね。

[ボイトレ][姿勢・表情]「良い姿勢」で歌うためには、一旦崩してやる必要がある。

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過去にこんな記事を書きましたが、

「良い姿勢」をとるために、あごは引くべき?…姿勢について図解してみた。 - 烏は歌う

それの補強的な記事を。



顎は引きすぎてはいけない


世間では、良い姿勢をとるために「顎を引け!」とよく言われているのですが、実は顎は引きすぎてはいけないのです。


というのも、身体の色々が整っていない状態で顎だけ引いてしまったり、必要以上に顎を引きすぎてしまうと、顎や喉が窮屈になってしまうからですね。

また、視線が下がるというのも、発声にとってはけっこうよろしくない結果を引き起こしやすいです。


なので、顎の引きすぎはよろしくないですし、「引きすぎて窮屈になってしまったあごまわりの筋肉」を緩めるためには、敢えて一度「顎を引くどころか、逆に上を向いて声を出したり歌ったりしてみる」というトレーニングをやってみるのもいいのです。

ただ、上向いて「力んで」歌ってしまうとそれはそれで多大なストレスがかかりますので、あくまで軽く、ね。


「アゴを引いて声を出しましょう」の勘違い アゴを引いてしまうのはなぜいけないのか:永井千佳の音楽ブログ:ITmedia オルタナティブ・ブログ



脚は大きく前後に左右非対称に開くとよい


また、「姿勢を良く」と考えると、どうしても「脚はあまり左右に開かない」「左右非対称になってしまうので、脚をそろえて立つ」「両足に均等に体重をかける」というふうになりがちですが、これもあんまり声にはよろしくなかったりします。


脚をある程度開いてやらないと「直立不動」な姿勢になってしまい、見栄えはよろしいのですが「腰(背中)が力んだ姿勢」や「腰が反った姿勢」になってしまいやすいのですね。


なので、脚を「前後に」開いてやると、「お尻」に力が入れやすくなり、「腰」への負担がかかりにくい「良い姿勢」で立てるようになります。

また、体重は均等な状態で「固定」するのではなく、出したい声やしたい表現に応じて「揺らぎ」を持たせてやると、思い通りの声も出しやすいですし、疲れにくくなります。


高い声を出すための姿勢 - ヴォイストレーナー チャトラ猫の原稿倉庫 - Yahoo!ブログ

[ボイトレ][歌唱力]練習しているとピッチが下がってくる現象について。

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コメント欄に質問来てたので、応えたら結構長くなったので記事に再利用。


ピッチが下がるということは


ピッチが下がる原因は、

「声帯自体のテンションが悪くなって、音程がずれる」

「表情などが悪くなって、共鳴の様子が変わり、実際よりピッチが低く聞こえる」

の2つのだいたいどっちかです。


「声帯自体のテンションが悪くなって、音程がずれる」という原因に対しては、例えば「グリッサンド・エクササイズ」をすることで、声帯の動きを再確認&ストレッチしてやることで、解消することがあります。

声帯のストレッチ…音程を微調整する筋肉を目覚めさせる方法 - 烏は歌う


また、「表情などが悪くなって、共鳴の様子が変わり、実際よりピッチが低く聞こえる」という原因には、表情をそれっぽくすることで解消することがあります。

聞き上手は声美人!〜「愛想良く人の話を聞く」と、良い声が出せるようになる3つの理由〜 - 烏は歌う



それらを引き起こす、さらに上位の原因として


で、「声帯自体のテンションが悪くなって、音程がずれる」「表情などが悪くなって、共鳴の様子が変わり、実際よりピッチが低く聞こえる」という症状ですが、これが起こりやすくなる原因としては、

「過度の練習や日常生活での疲労による姿勢の悪化、筋肉の硬直・コンディション低下」

が非常にありがち。


まあ、「練習不足」でも起こる症状ではあるのですが、こんなブログにまで手を出してしまうような人はどちらかと言えば練習ホリックな人が大勢でしょうな。


なので、まずは休養とか気分転換とかが大事だったりします。


しかし、「せっかくの練習時間を無駄にしたくないから、なんとかならんのか」と思う人も多いでしょう。

そんなときは、とりあえず一つ前の記事のような、「マジメに良い姿勢で練習しているとかたまりがちな部分」をほぐすようなトレーニングがいいでしょうね。

「良い姿勢」で歌うためには、一旦崩してやる必要がある。 - 烏は歌う


あとは、どうしても喉のまわりの筋肉(顎、首など)に力が入ってきてしまいやすいので、敢えて「下半身」を意識しながら声を出してみるとか。

気になるところから、徹底的に目を逸らしてみる - 烏は歌う

広瀬香美流「お尻の穴歌唱法」 - 烏は歌う


あとは、過去に書いた記憶はあるんだけどサルベージするのが面倒なのでリンクは貼れないが、


「歩きながら歌ってみる」


「片足立ちで歌ってみる」


「身体や頭を左右に軽く振りながら歌ってみる」


なんてのも、疲れてるときとか、変な力みが起きてしまうときにはおすすめの練習法かな。



あとは、リラックスの定番、「深呼吸」とかね。

ゆっくり吸って、もっともっとゆっくり吐く。

吐くときは軽く圧をかけてやると「さらにゆっくり」にしやすいので、「s」子音をかけながら吐くことによって、とにかく長く一定の息を吐くようにするといい感じです。

ただ、思い切りsを鳴らすと顎が力むので、そこまで力は入れないように。



さらには、どうにも喉の調子が悪いときは、案外原因が「背中」にあることもあるので、その辺のストレッチも効果的ですね。

毎日の身体のメンテナンスに、「背中」のリラックスを。 - 烏は歌う

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